いつかの遠い日にも今日のこの気持ちをきっと昨日の事のように思い出すだろう。







愛しき日々よ




 自分の受け持ちの生徒兼恋人が----気付くとウチに転がりこんでいた。


 水面下で着々と進められていたせいか、大した荷物もなく引っ越しはすみ。しかし人一人が引っ越してくるとなればそれなりにバタバタするもので。
 騒ぎながら掃除を済ませた後、荷物を見てみれば要るものさえもが劇的に少ない実は苦学生の為に必要なものを買い込みに、昼飯を食いがてら最近出来た大型ショッピングモールに出向いた。
 揃いの食器がいいだの、ケーキが食いたいだの、ひとつのパジャマを上下で分けてカップルパジャマにしたいだの(なんでこんなに嗜好がオヤジなんだろうコイツは)せっかくベッドを買ってやると言ったのに本気で驚いたツラをした後に一緒に寝るからいらない、だのを言うバカの相手をするのは疲れたが案外新鮮なもので楽しかったらしい。ほんの1時間程しか経ってないと思っていたのに、一旦荷物を置くべく向かった屋上にある駐車場で車が夕焼けに包まれ赤く染まっていたのには驚いた。まだ食料品を買っていなかったので空の冷蔵庫を思い出して慌てて食品売り場へ向かった。
 食料品の買い出しはまた大変だった。
 晩飯は何が食いたいとかどっちが作るかとか話しながら目に付いたものを適当に買い物かごに入れたら、よりにもよって生徒に怒られた。
 生意気な口を利いたので1発殴ってやろうとした矢先、鮮度だの値段だのを吟味しだされて、毒気を抜かれた。何処がどう違うのか一向に解らないパックの中身を判別する生徒を(引きながら)凝視していたら何を勘違いしたのか
「家庭的な銀時くんに惚れ直した?」
 なんて寝言を言い出したので正直な気持ちを述べたら拗ねられた。(放置しておいたら勝手に立ち直った)
 何とか買出しも済まし、家に帰り着き。騒ぎながら食事を済ませ、交互に風呂に入った。
 朝から晩までバタバタしていたせいで多少疲れた体でヤる気にはなれず、とっとと寝てしまおうと入った寝室。
 宣言通りベッドに潜り込んできたガキは俺に抱きつきながら幸せそうに言った。


 ――――毎日毎日。1日の一番最初と一番最後に一緒にいれる。


 そして気づく。
 一緒に買い物に行くのも二人で食事をするのも眠るのも初めての話ではなく、今まで何度も泊まりに来る度にあった事で。
 なのに今日1日こんなに機嫌よく過ごし、セックスもなくただ抱きしめる腕に包まれて眠るだけなのに満たされた気持ちになるのはきっと今日からこのガキと共に暮らすからなんだろう。
 日が昇り朝が来て、この家の扉を共に出て一日を過ごしそしてそれぞれの家に戻ることもなくまた同じ家に帰る。
 目を開けて一番最初に見る姿。
 目を閉じる間際に見る姿。
 愛しくて仕方のないものと共にある時間。
 そんな日々がコレから先に広がっているんだと思うと少しくすぐったい思いがするが、悪くない。

 一日一日続く日々の中、先のことなんて全く解りはしないし、恋人を作って今まで長続きした事もないけれど。今までと違ってこのガキとこうしてずっと一緒に居たいんだと俺が望んでいるんだから、きっと俺たちはこれから広がる日々の中ずっと共に居るだろう。



 だから。この面映ゆい気持ちと抱きしめる腕よりも暖かな胸のうちを、いつかの遠い日にもきっと昨日の事のように思い出す。



 隣に眠る男のふわふわとした髪を頬に感じながら。







ふかゆきの深雪さまより頂きました!
ちょっ、フェアリーですよ、フェアリー!! てか生徒のこと愛してる先生がむちゃくちゃ可愛いのですが! 生徒は勿論全力で先生を愛してますしねv
そして先生の金銭感覚皆無っぷりが素敵です。(笑)
和みつつもきゅんとするお話をありがとうございましたvv
また下さいね。(堂々と強請るのはやめなさい)

07.03.10




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