土方×神楽+銀時(銀土?)




 少し前までは、銀ちゃん銀ちゃんと鬱陶しいくらいに纏わりついてきていたのに。

 ―――何だろう。何だろうこの疎外感。
 雑踏の中で妙に孤独を感じて、銀時はそう思った。
「ひぃちゃん、こんなトコで会うなんて奇遇ネ! 酢昆布奢るヨロシ!」
「また酢昆布かよ。たまには違うもんにしとけ」
「何云ってるアル! 酢昆布に勝る駄菓子なんてこの世には存在しないヨ。キング・オブ・駄菓子ネ!」
「安い王さまだな、オイ」
「庶民の考える価値など関係ない。それがキングのキングたる所以ヨ」
 チッチと立てた人差し指を振って誇らしげに云い張る神楽に、土方はくっと笑みを漏らす。そして途切れないその笑いを堪えるように口許の煙草を噛み締め、神楽の頭をぐりぐりと撫でてやっているのが少し離れた処に立つ銀時にも見えた。
 ―――ねぇ、いつの間にそんな仲良くなってたのお前ら。
 ほのぼのとした立ち入れない雰囲気に、銀時の疎外感は強まる。
 町を歩いていたとき、視線の先に見つけた黒い洋装の男へと真先に駆け出していったのは銀時の隣を歩いていた神楽だった。
 そうして今に至る。
 置いてけぼりにされた銀時は黒尽くめの美人な男に懐く少女という奇妙な取り合わせを遠目に見ていることしかできなかったのだが、そこではたと気付いた。
 ―――いや待て。これはもしかしていいことなんじゃねぇの? ほらアレじゃん。継母と娘ってのは得てしてギクシャクしちまうもんだけど、この様子だったら土方がウチに入ってもアイツらは関係良好、仲睦まじい母娘になれんじゃねぇの? え、それって良くね? たまにする喧嘩の種はお父さんの取り合いとか、良くね? うわ俺むっちゃ倖せモンになれんじゃねぇの!?
 恋人――と少なくとも銀時は思っている――の土方が坂田家に嫁ぐ妄想のおかげで、身にひしひしと感じていた寂しさから一転ニヤけそうになる銀時に、土方と神楽がくるっと振り向いた。
 そのふたりはいつの間にか本当に仲良さそうに手など繋いでいる。頭ひとつ以上違う身長差ではつらくないのだろうかと思うが、彼らはそんなことを気にも留めていないようであった。
 そして、銀時の表情にきょとんとする神楽とは違い、察し良く何事かを覚ったらしい土方は性質の良くない笑みにくちびるを歪める。
「何してるアルか、銀ちゃん。早くひぃちゃんに奢ってもらいに行くネ」
「ああ。早くしねェと置いてくぜ」

 お義父さん。

 と、続けて土方は確かにそう口にした。

 ―――え、そっち!!!?


 俺のいとしい恋人が今日は少し意地悪でした。









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