昔々あるところに、仔ねずみの総悟くんと牛の十四郎が種族を超えて仲良く一緒に暮らしていました。
 その二匹はある日、神さまの宴に招待されて出掛けることになりました。
 宴の開催は一週間後。ですが、家が遠く足も遅い十四郎は、早速その日に出立することにしました。
 そこへ総悟もやって来ます。
「アンタこんなちっけェ俺にあの距離歩かせるつもりで?」
「……台車でも引けってのか」
 暗に自分を連れて行けと云っていることを覚り、十四郎はうんざりしながら答えました。しかし、総悟は首を左右に振ります。
「そんなもんは要りやせんぜ。要らねーからその背中に乗せろィ」
「その年でおんぶ強請るなや」
「おんぶたァ云ってねぇでしょう。牛は牛らしく四つん這いで歩けっつってんだよこのノロマが」
「設定上鈍いってだけだからな分かってんのかテメー!」
 心底蔑んだような眼で言葉を吐く総悟に、十四郎は怒鳴りました。ぺしん、と頭をはたくと総悟はむっとくちびるを尖らせます。
「暴力反対ですぜ」
「ふざけたことほざくほうが悪ィんだよ」
「いいから乗せていけやィ」
「絶対ェ嫌だ」
「…………」
 十四郎がきっぱり拒否すると、総悟はむくれた顔のまま俯きました。諦めたかと十四郎はホッと息を吐こうとしましたが、次の瞬間ぐっと喉に詰まらせます。
 ちらりと垣間見えた総悟の眼が、物騒なドSの色をしていたからです。
 そして、物凄くとんでもなく嫌な予感がすると冷や汗を流す十四郎を置いて、総悟は何処かに行ってしまいました。
 十四郎がドキドキしながら総悟が出て行ってしまった扉のほうを見ていると、すぐにまた扉が開きます。総悟が、背中に隠しきれない何かを持って戻ってきたのでした。その何かは、釣竿のように見えましたが何故今そのようなものを持ってきたのか理由が分からなくて十四郎は首をかしげます。
 総悟は、ニヤリと悪い笑みを浮かべました。

「アンタ、こいつを見てもそんなことが云えますかねィ?」

 自信ありげにそう云って、総悟は背に隠していたものをぱっと前面に出します。

「……!?」

 十四郎はそれを見て、驚愕に眼を見開きました。






 眼前に吊るされるマヨネーズの誘惑に勝てず、十四郎は総悟を背中に乗せて家を出発したのでした。





≪『ねうしのぼうけん』より抜粋≫










嘘です。










もふ名義発行の銀土本ではお馴染みの嘘予告です。(笑)
折角なので沖土でもやってみました。実際の書き下ろしは子丑の話ではないのでご注意くださいませ。原作設定ですので。
思い立ったが吉日、1時間ほどで仕上げました。やる気というものは偉大ですね。

さて、本当の本文サンプルはこちらになります。



【文責:羽月/イラスト:てん】